考える
美術館の多様な楽しみ方を伝える
東京都写真美術館では、誰もが美術館での時間を楽しめるよう、アクセシビリティの向上に取り組んでいます。館内のバリアフリー整備に加え、やさしい日本語の利用案内の配布、触地図やベビーカーなどの貸し出し、手話通訳つきの展覧会ギャラリートークなどを実施しています。
月に一度の「オール・ウェルカム・デー」では、ボランティアが展示室をアテンドしながら鑑賞に困りごとのある利用者をサポートします。展示キャプションの読み上げやタブレットを使った鑑賞補助、筆談や指差しシートを用いたコミュニケーションなど、必要なサポートを提供しています。
社会共生担当の舟之川聖子さんは「障害=環境とのギャップ」と捉え、障害のある人だけでなく、誰もが安心して美術館を楽しめる環境づくりを進めています。
これらの取り組みや、さまざまな鑑賞方法を広く伝えるための広報デザインを担当しました。
形にする
広報ツール一式のデザイン
利用当事者の声を反映したキービジュアル
「オール・ウェルカム・デー」のキービジュアルには、さまざまな鑑賞方法を伝えるイラストを使用しました。鑑賞サポートの内容を具体的に表しつつ、受け取った人が美術館を訪れたくなるような表現を目指して、イラストレーターの須山奈津希さんにお願いしました。イラスト制作では、利用当事者からのフィードバックを丁寧に反映して仕上げていただきました。

ディテールの工夫


チラシの制作は、わかりやすい表現方法を担当の舟之川さんと模索しながら進めました。両面には、内容を音声で聞ける二次元コードを配置。やわらかな手触りの紙を用い、四隅は角丸加工で仕上げています。ボランティア用のバッジには、光の反射を抑えるマット加工を施しました。


イベントロゴは「すべての人に開かれた美術館」をイメージした朗らかなタイプフェイスに。ロゴに合わせて、案内用図記号(JIS Z8210)の形状を参考にピクトグラムを作成しました。

継続的な広報を支えるSNSテンプレート
美術館スタッフが内容を入れ替えて使えるSNSテンプレートを、オンラインデザインツールのCanvaで作成しました。チラシや館内掲示物との一貫性を保ちつつ、読みやすいフォントを選定。InstagramとX(Twitter)用のテンプレートセットを整備しました。

クレジット
ディレクション:舟之川聖子(東京都写真美術館 社会共生担当)
イラストレーション:須山奈津希